「高校生の頃にハマったものは大人になってからも熱中できる」
平積みされているビジネス書をパラパラとめくれば、幾らでもゲットできそうなフレーズだ。そろそろ休職期間にも飽きてきたし、愚直に実行してみるか。
高校時代を振り返る。
そういえば、長い通学時間の暇つぶしに短歌を作っていた。
元々は、「短歌2首」が夏休みの課題だった。
ノートに書きためて、怠惰な友達に配った気がする。ジュース一本くらいを対価に。
カルピスもどきの500ml缶やらパックンチョやらが100円で売っていた自動販売機が懐かしい。
31文字で100円になるなら、貧困学生にとっては良い商売だ。
夏休みが終わる頃には、50首くらい”ネタ帳”に詰まっていた。
今では、そのネタ帳も、火力の低い「町」の焼却炉を通ってどこかで灰となっている。内容も全然覚えていない。当時を振り返ることができないのは残念だが、17歳のプチマイブームを少しやってみようと思った。
1週間、短歌を読んだ
「うたよみん」という短歌系SNSを見つけたので9首を投稿してみた。
旧友と紫煙にのせて吐く憂鬱
「ラーメンでも食べに行こうか」
梅田でシーシャを吸いながら、友人が永遠に課長の愚痴を言っていた時に詠んだ1首目。大阪駅前ビル地下の「どストライク軒」に行こうとしていたが、短縮営業だったため、閉店時間に間に合わなかった。結局うどんを食べた。加えて、シーシャの煙は紫じゃない、白だ。ほぼフィクション短歌。
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日々出社ステイホームに憧れて
身体を壊しひとり第2波
1首目にトリッキーな形式で短歌を詠んでしまった。
調子に乗っていると思われたくなかったため、初心者らしくちゃんと5・7・5・7・7で詠んどこっ!と投稿した。「友蔵心の俳句」みたいになるので、あんまりこういう説明短歌は詠みたくない。
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心なくアプリ検索品定め
食も、住居も、職も、女も。
友人がずっとマッチングアプリで女性を品定めしてたので、私には分からない価値観だなぁと現実を憂いた3首目。かくいう私も、ずっと転職エージェントアプリをチェックしていた。「女も。」は「男も。」でも良いが、語呂の関係でこちらを採用した。ショクの音が繰り返されているのが好き。
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涙を流して大阪転勤
今では三田をサンダと読むねん
大阪周辺に住んでいると「三田行き」の電車をたくさん見る。宝塚線の終点になることが多いサンダ市の駅だ。関東に住んでいる人間は基本的に「ミタ」と読む。東京に来たばかりの関西人は都営サンダ線と心の中では読んでいる。
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YouTube 15分を20再生
徒歩15分の朝風呂へGO!
深夜1時からYouTubeを見始めて朝6時になったことを表しているだけの短歌。自宅から徒歩15分のところに「極楽湯 尼崎店」がある。スタンプラリーで30ポイント溜め、入浴1回無料券を手に入れた実績がある。
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あぁきっと、
こちら北区大阪駅前路上喫煙推進所
みんなおいでよ俺たちの街へ~♪
大阪駅では日夜、路上ライブが行われている。
本当にサーキットフェスの規模で。
ヨドバシカメラ前ステージにはたくさんの吸い殻が落ちている。
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有名店
開店前から20人
退店時には30人
自宅から徒歩圏内に「ラーメン百名店」があったよ、ってだけの短歌。
美味しかったよ。平日なのに、「この人たち何しているんだろう」ってくらい並んでた。
ぶたのほし (尼崎(JR)/ラーメン)★★★☆☆3.80 ■予算(昼):~¥999tabelog.com
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「飲み屋スカ?」
ネオン駆け抜け夜行バス
ジトリと浮かぶ不安押し込め
夜行バスの発着場は歓楽街を抜けた先にあることが多い。ひとりでスーツケースを転がしている人間に声をかけるキャッチは、マーケティングとか学んだ方が良い。
夜行バスに乗る際のジメッとした不安を梅雨の湿度が助長する。新幹線や航空機、みんなでレンタカーでもなく、夜行バスでの移動。移動のための移動。夜行バスで移動する社会人には何か理由があるのだ。
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ヒモかもな
あなたの家で待ちぼうけ
フルーツサンドを作っておくね
お菓子やケーキは作れない。ひとり暮らしの部屋で作れる最高級のスイーツはフルーツサンド。ヒモっぽい生活を送っている切ない理由は、機会があればまた今度。
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タンタカタンタンタタンタタンタン~
短歌と聞くとコウメ太夫さんのテーマが頭に流れる。
正確には「タン」ではなく「チャン」なんだけど。
数年前の大学の文化祭で、コウメさんのお母さんと息子(ココウメ)に偶然お目にかかった。「今後ともコウメをよろしくお願いします」と丁寧にご挨拶いただいたので、布教活動としてここに記す。
短歌に啖呵を切った結果
短歌は31字に全てを込める。
だから、本記事のような、自分の短歌に対してバイアスをかけるようなことは野暮な行為かもしれない。ただ、そんな高尚な段階ではないし、言葉遊びをしているだけ。自分が楽しければ良い。
短歌を詠もうとすることで、日々の小さな出来事に目を向けることが非常に多くなる。生活が楽しくない、何もやる気が出ないという時にも、「これ、短歌にできるかも!」と気づくだけで心なしかワクワクする。
140文字のTwitterよりも文字数が限られている分、ちょっと頭をひねる。心地よい難しさ。ある程度読者の想像の余地も残したいが、説明が不足しすぎていて奇怪であるのも良くない。描写対象・方法があるあるすぎて、しょぼい標語みたいにしたくもない。
絶妙なバランスで、読者に追体験してもらえる表現はどこだろう?
読んでいて面白いリズム・音の並び方は何だろう?
初心者ながら、考えることはたくさんある。
どうやったら「心を惹く」短歌が詠めるのか、知りたい。
まずは、「たくさん読んで、たくさん詠む」が鉄板なのか。
どうせなら、短歌の新人賞に応募してみよう。
未発表作品に限るが、30~300首を出品すれば良いとのことなので、質は届かなくとも応募するだけなら十分にできそうだ。
今度からは、上手く出来た作品はネットには載せないでおこう…
キッズの皆さんには、オンラインに残らない形でのフリースタイルタンカバトルとして、啖呵の切り合いを是非ともお願いしたい。みんなで短歌詠も!
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