1つ星 (2 投票)
読み込み中...

【書いてみた】ハッピーバースデー前ソング

明日には生まれ変われる気がしてる
二十三歳最後のある日



いつもと変わらず、朝が来た。
3回目のアラームを消して起き上がる。

コップに緑茶を注ぎ、一口だけ飲む。

洗面所に向かう。
珍しく、洗顔用ネットで、きめ細やかな泡を作る。
顔に優しく載せ、広げ、洗い流す。

無印良品の「高保湿」化粧水を手に取り、顔に広げる。
次に、「しっとり」乳液を手に取り、顔に広げる。

コップに残っていた緑茶で、ツムラ半夏厚朴湯を一袋飲む。
おにぎり一個分のエネルギーが凝縮されているゼリー飲料を飲み干す。

窓際のPCに電源を入れ、立ち上がるまでの時間で、洗濯機を回す。
洗剤、漂白剤を目分量で洗濯槽に注ぐ。
柔軟剤は槽の縁にある専用の穴に注ぐ。
蓋を閉め、蛇口をひねり、「スタート」ボタンを押す。

部屋に戻り、いつもと同じ英数字を2カ所に入れる。
デスクトップが開いたら、WiFiとVPNにつなぐ。
とりあえず、出社打刻を行う。

洗濯物を干したり、トイレを掃除したり、机上を整理したりしながら、なんとなく在宅勤務というものを行っていく。
これが、「在宅勤務はラク」と言っていた世間の声か?

お昼が近づく。
サラダチキンと袋サラダを買うために、コンビニへ向かう。
道中で、小学校の鐘が聞こえる。
校舎を囲う柵には人権標語の看板が括りつけられている。

「いじめっ子ほんとはみんなと遊びたい」

だいぶ、「いじめっ子」側に肩入れをしたメッセージだな、と思う。
私はあまり好きではない。

家に着いたら、コップに緑茶を注ぎ、ツムラ半夏厚朴湯を一袋飲む。
袋サラダをパーティー開けにして、サラダチキンを丸ごと載せる。
何か物足りない気がしながらも、テレビ画面でYouTubeを流し、誤魔化して食べる。

午後は、簡単な会議がある度にワイシャツを羽織り、画面上の顔たちと話した。
休職明けだから、業務負荷は少ない。
時間になったら、雑記多めの日報を共有して「退勤」打刻を押す。

浴室乾燥機を使って乾かしている洗濯物たちの様子を見に行く。
乾き具合によって、干す場所を入れ替え、追加で「乾燥」ボタンを押す。

床に散らばっている物をすべてテーブルにあげ、ルンバのスイッチをオンにする。
財布とスマホ、折りたたみ傘をトートバッグに詰めて、近くの喫茶店に行く。

ジャズが流れていて、客も少なく、居心地が良い。
コーヒー自体は、そんなに美味しくない。
短歌を詠み、応募用紙に記す。
30分ほどだけ滞在し、昼間と同じコンビニへ行く。

2リットルの水と、もずくと豆腐を買う。
家に帰ると、ルンバも浴室乾燥機も静かになっていて、「ただいま」だけが部屋に響く。

冷蔵庫から緑茶を出し、ツムラ半夏厚朴湯を一袋飲む。
もずくと豆腐を1パックずつ開けて、やわらぎメンマと一緒に食べる。

テレビの中の櫻井翔くんが、「今日は9月10日、牛タンの日だそうです。」と言う。
嵐のメンバーが、順に、焼き肉に関するエピソードを話し、「vs嵐」のオープニングが終わる。

テレビを消して、アロマディフューザーの埃を拭く。
水100mlとエッセンシャルオイル数滴を入れ、電源をつける。

久しぶりにブログでも書くかと、PCを開き、今に至る。
この記事を投稿したら、ランニングをしようと思っている。

明日は、何かが変わる気がした。
人が来てくれるから掃除をしたし、ちょっとだけ生活に彩りを加えることができた。
そして、何よりも明日は9月11日だ。
四捨五入の瀬戸際、24歳になる。

ただの「ある日」である。
9月10日であろうと、11日であろうと、12日であろうと、大して世界は変わらない。
でも、明日から何かが変わる気がするんだ。
ここまで、止まりながらも、人よりも新しいことを、違うことを、できることを足掻いてきたんだから。


▼関連記事

にほんブログ村 小説ブログ エッセイ・随筆へ
1つ星 (2 投票)
読み込み中...