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確かにあったけど、本当にあったとは言い切れなくなってしまった時代

2013年・夏


スカッシュとレモン潰した感情が私の横をすり抜けてゆく



後ろ髪乱す姿に恋い焦がれ 君は素肌を小麦に焦がし



土の色ポタリポタリと変わりゆく あごのしずくに勝利訪れ



帰り道 夏の夜風に逆らって 宵の明星 目指して歩く



朝焼けがビルをこすって茶に染める 僕はまなこをこすって歩く



前日の豪雨が濡らす自転車を拭く手間増えて電車を逃す



つまらない授業で眠る生徒たち 台風一過の稲穂のように



キレモノの学生多いこの付近 まむしに注意 早稲田大学



黒板をノートに写す。人生はマークシートじゃ答えられない。



図書館に籠もった後の帰り道 ひぐらし招く境内抜けて



坂を越え止まらぬ汗を手で拭い 甘酸い君に今会いにいく



面をとり君のハートに突き一本 夕陽の浮かぶ坂おりてゆく



悲しみを背負って歩く暗い道 雲で霞んだ満月の夜に



街灯の仄かな明かり集う虫 ローソン前に屯う学生



照りつけるパンクロックのステージで押し寄せる波 ビートを刻む



信じてた天気予報に欺かれ 天のわがまま予定狂わす



傘鳴らし人は下向き足早に 優しさ奪い去った夕立



ひとときのストレス晴らす舌打ちをした口内炎の痛みが残る



花ひとつ私のために買いました。ビニルハウスのゆとりっ子たち




2013年・冬



秋の風スカートひらり連れ去って頬に紅さす鋭いトゲか



ワイシャツの白が輝く夏を終え ベージュ、ピンクを羽織り色づく



同じ場所同じ窓から覗くのに 外の景色は僕を置き去り



肩あたり「ごめんなさい」と振り返る 彼はこちらを向かずに進む



イヤホンをつけた左の耳通り 身体中にベースが響く



タンタカタ タカタカタンタ タンタンカ 31字の奏でるメロディ



悲しくて空見上げれば黒い闇 星の光に勝るネオンよ



不機嫌な空が2人を近づける 右肩濡らす彼の優しさ



絨毯の敷かれた部屋にいる2人 ハンドクリームの蜜柑のかほり



恋すてふ 我にその気はなかりけり 人は知らずに囃したてるが



風邪引いた?顔赤いけど大丈夫? どうして私の体温上げるの



今来ると君のメールを信じたの 有明の月が私を笑う



寒いから一緒に飲もう「これ君の」 力が入り凹むスチール



湯けむりに雲隠れする君の顔 手のしわできる浦島太郎



オリオンを数多の星からなぞりだす 白い吐息が眼鏡曇らす



君は言う「好きだったのよ」あの頃は ツンとするのはキンモクセイか



語りつつ2人に流れる長い夜を 明かす楽しさ君だけが知る





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