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【お盆企画】コロナ禍で祖父母にちょっとだけ会ってみた

「あんたたちは、恵まれてるようで一番しんどい時代に生まれたなぁ」

昨日、戦争時代を生きた祖父に言われた。
特に私の近況は話していない。普段からそう思っているらしい。

実家から車で40分ほど離れたところに、祖父母が住んでいる。
私は大阪赴任しているため、かれこれ1年弱の間、会えていなかった。
休職してからも、コロナ禍で何かあったら怖い、ということで、会いに行けていなかった。

そろそろ仕事をしなければ、貯金が底を尽きる。
転職活動や転勤交渉を続けてきたが、結局、大阪に引き戻されることになった。
大阪に戻ったら、祖父母とはいつ会えるかも分からないので、顔だけ合わせることにした。

1年ぶりに会った祖父母は思ったよりも年を取っていた。
祖母は同じ質問を繰り返すこともあり、祖父は年末年始に一度、体調を崩した。
2人とも元気ではあるが、いつ、何があるかは分からない。
それは私にも言えることだが。

妹が出演した『ロミオとジュリエット』のミュージカルDVDを渡し、玄関先でお暇する予定だった。

「そんなに急ぐ必要はない、元気なんだろ?大丈夫、あがってけぇ」

懐かしい居間に座り、マスクを着けたまま20分ほど話すことにした。
祖父母はマスクを着けていない。

「マスク外しゃあええのに」

北九州の訛りが残っている祖父。中学卒業と同時に東京へ働きに出た。
今は定年を満了し、豊かに暮らしている。

念のため、とマスクは外さなかった。

「元気にやってるか?」

何度も聞かれた。
うん、としか答えられなかった。
大阪で精神をすり減らした日々、何にもやる気が起きなかった日々が、”元気にやっていた”とは到底思えない。
しかし、最近の状況を説明できなかった。

イチから説明するのが面倒くさかったのもあるし、心配をかけたくなかったのもある。
自分のプライドのようなものが邪魔をしていたのかもしれない。
とにかく、うん、としか答えられなかった。

祖父は、こうも言った。

「最近、思い浮かべるのは孫のことばかり。孫との思い出、孫は何してるかな、って。
そんなことを、ばあちゃんと話して笑ってる。みんな、このご時世で会いに来てくれないからさ。
2人じゃ、孫の話をするくらいしかできない。」

「次の目標は、ひ孫の顔を見ること。いつ、あんたらの名前を忘れるかわからんよ」

お盆だというのに、里帰りできない人たちがいる。
身近でも、たくさんいることを知っている。

このモヤモヤをどこにぶつけたら良いか分からない。
仕方がないことなのだろうか。

祖父母とは、あとどれくらい会えるだろうか。
両親とだって、何日会えるか分からない。
年に1日会えたとしても、あと30日程度だろうか。
本当にそれで良いのだろうか。

明日、ゆかりのない関西へ再度出兵する。
家族も、愛する人も、関東に置いて、仕事をするためだけに。

お国のために、会社のために、個々人の人生がメチャクチャにされようと関係ない。
採用時には、東京勤務だって言われた?
契約書には「転勤有」と記述されているだろう。 
そんなに言うなら、仕事を辞めて、東京に戻ればいいだろう?

それで、本当に、私の人生が好転すると思うか?
まともな働き口もないのに。

テクノロジーの進歩によって、どこででも仕事ができるようになったらしい。
が、人間や組織の形が変わらなければ、それが実行されるとは限らない。

流行りの自己責任論に基づいて、脱却しようとしたけれど、できなかった。
休職中の3か月ではどうにもならなかった。

仕事を再開しても、関東へ帰れるように努力し続ける。
人生を前に進めるために、好きな人たちと暮らすために。


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