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しーばすりーがる12年をうぃるきんそんたんさんで割って、ハイボールにした。麻婆豆腐と刺身蒟蒻をアテに晩酌だ。あまり聞かない組み合わせ。
久しぶりにお酒を飲んだ。
「今日は飲むか？」と嬉しそうに父が聞いてきたから。
「あなたは毎日、飲んでいるじゃないか」と断ろうとした。
いや、待て、そうか、今日は金曜日か。
どうりで父の目は輝いているわけだ。
休職してから金曜日を意識しなくなった。いや、休む前からだ。
土日も関係なしに仕事があったから。
まぁ、そんな悲しい話は聞きたくない。
直近での飲酒は、江坂のバー。高校時代からの友人と。
らふろいぐ、やら、かるう゛ぁどす、やら、家じゃ飲まないお酒を通ぶって頼む。
マスターってのは、すべてを知っている。
いつのまにか、こちらが言っているだけなんだけど。
どちらにせよ、すごい能力。
「俺は53歳やけど、周りの連中では上場企業に勤めているヤツらが、いっちゃん居心地良さそうやな。40くらいまでは、本当にそんな会社あるんやな、ってくらいキツそうやったけど。」
店内ではサムクックが流れる。
「まずは東京帰ろか。あんま気ィ落とさんといてな」
そんな言葉が欲しかったわけじゃない。
でも、別に嫌な気持ちにもならない。
「また来ます」
東京への夜行バスに遅れぬよう店を出た。
＊＊＊
海上自衛隊は、金曜日にカレーライスを食べる。
長い船旅の中で、曜日感覚を忘れぬために。
っていうのは正しい理由じゃないとも聞いたけど。
とはいえ、実際に毎週金曜日にカレーが出ているのならば、船員はそれで金曜を思い出す。もし、カレーが木曜に出たら、「今日は金曜だ」と勘違いをする船員も居るだろう。
今や、カレーが金曜日を伝えるツールである、というのは正しい。
＊＊＊
今年の新卒は、”華金”を実感したことがあるのだろうか。
コロニャンっていう猫の妖怪がそこら中を徘徊していて、夜の街を訪ねるには大きなリスクを背負わねばならない。コロニャン飼育予備軍がギュウギュウ詰めにされている動く直方体は、換気がされているから良いみたいだけど。面白いね。
人生には、キリ、が必要だ。
特に学生ステージを抜けると、キリは自分でつくらなければならない。
気を抜いていると簡単にキリを逃す。
金曜日の夜は、ちょうど良いキリだった。
社会とか、政治とか、経済とか、デッカい波に揺られているだけだとすぐに溺れる。定期的に流木に捕まったり、ライフジャケットを見つけたり、一緒に漂流している人と手を取り合ったりしないと簡単に致命傷を負う。
「あー、はい、あなたはもう泳げないですね、陸に居ていいですよ。ま、海に出ないと、どこにも行けないし、いつかは海面上昇でその島もなくなりますけどね。」
一度、溺れると、なかなか航海には出られなくなる。
「海は広いよ～大変な時もあるけど、綺麗な景色もたくさん見られるよ！」
「俺の居る海はゴミが浮いているけど、波は穏やかだし楽だよ～」
「飛び込んでくればなんとかなるって！なっ！」
友人が岸まで迎えに来て、色んなことを叫ぶけど、みんなシュノーケルをつけたままだから何を言っているのか分からない。
届く声には感謝もするし、それがなければ陸で孤独死していた。
でも、何を言っているのか分からない。
結局、自分で飛び込むしかないのだ。次のキリを決めて。
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